は今日もカウンターに立つ ⑷

喫茶 香風は見た目は実に時代を思わせるノスタルジックな雰囲気を漂わせている。使い込まれた食器や家具類がそれを演出する。今はもう買えないものばかりだ。そして一本木のカウンターや黒光りする木目の壁。唯一の新調した物はコーヒー豆を焙煎する為の焙煎機のみ。祖母が亡くなる前の一か月前に入れ替えたばかり。珍しく祖母が笑った最後の記憶だ。少し使い込まれたので私でも使えるようになっていた。ガスに点火して昨日到着した約10キログラムの麻袋に入っているコーヒー豆を入れる。焙煎が始まる。この時ばかりは音を立てない。僅かに鳴るハゼを見逃さないように。道を走る車のエンジン音の振動も本当は邪魔だ。集中して集中してと、自分に言い聞かせて。