最初の客人は

雰囲気は紳士。
髪は綺麗な黒の髪にわずかに白髪が混じる。
服装はTシャツにGパン。
体格も歳から推測するには素晴らしく良い。
「お水です。」
ガラスのコップを置いた。
一口だけ水を含めた。
「おおー、良い水を使っているのですね。」
口元が緩んだ。
「ありがとうございます。」
先程煎ったコーヒー豆をミルに入れて挽く。
コーヒーの匂いが店内に広がる。
ミルを回すハンドルの音も響き渡る。
「うん、良い音だ。」
見られているのは慣れている。
豆を挽き終わり、サイフォンの準備をする。
フラスコに常温にまで戻した水を入れてセットをする。
ガスに火をかけ温める。
しばらくすればコポコポと音を立てて水がお湯に変わりコーヒー豆に到達する。手に持っている竹箆を軽く回してフラスコの水がなくなるともう二、三回だけ前後に動かす。
ガスを止めれば自然とフラスコにコーヒーが落ちる。
コーヒーが落ちた後のコーヒー豆は山のように盛っていた。
「良いコーヒーだ。」
「砂糖やミルク入りますか?」
「砂糖を二杯。」
「はい。」
「そしてかき回さないで。」
「はい。」
砂糖を入れてコーヒーを注ぐ。
後はシンプルにバタートーストだけを用意した。
「本日のモーニングです。」
「ありがとう。」
トーストを食してコーヒーを一口だけ含ませる。
「トーストのパンも美味しい。コーヒーも澄んでいる。」
もう一度口、元にカップを近付ける。
「香りも香ばしくて良い。豆が新鮮の証拠だ。サイフォンにコーヒーが上がる瞬間の泡立ちの良さが物語っている。」
ここまで見ている人は珍しい。
「お客様、コーヒーにお詳しいのですね。」
「少し口煩かったかな。コーヒーは女性についで口煩い。」
「うふふ。」と微笑む。
「それも…『彼女』の影響だけどね。」
空になったカップにはザラメになっていた砂糖が残っていた。
スプーンを差し出す。
「良いコーヒーのお礼に話そう。『彼女』について。」
店内に波の音が聞こえた。