編入生-東 真那 ⑶

あの夜から一週間目の朝が来た。
一階からトーストの香ばしい匂いが二階の部屋にまで入り込んでいる。いつもならすぐにキッチンにいくのだが今朝だけは気分上昇ではなかった。
「あの真那って娘……本当に今日現れるのかな? ウチの高校、編入が結構難しいはずだけど」
この一週間、何をしてもあの娘を思い出す。モヤモヤした喉に物が詰まった感じをしたままキッチンにいく。
はぁー。
大きなため息。
「ん? 何か悩み事⁇ 恋の悩みなら聞いてあげる」
ママが軽々しく言う。
「『普通』の悩みなら話しているよ」
そう『普通』ならママにだって学校の友達にだって話している。だけど……いきなり真夜中の部屋に現れて勝手に話を進めて勝手に居なくなるなんて話をしたら警察に連絡するだけになってしまう。
でも……、現れて何があるんだろう?
「加奈、ホットミルクよ」
うん? 何か期待している?
「あ、熱いっ! 」
「朝から上の空だからだよ。早く食べて学校に行きなさい」
「はぁーい」
ヒリヒリする舌を出して家から出た。
私の通う高校は女子校。文武両道をモットーに勉強に部活に平均的に盛んな学校だ。
私もまだ入学式が終わって、中間考査が終わってようやく慣れてきた。
学校の校門に着くなり中学校からの親友の佐倉さくら紗江さえが話しかけてきた。
校門から校舎まではヨーロッパ調の園庭みたいになっている。
「夏休みも間近なのに編入生がくるらしいよ」
「そう」
「ん? なんか反応鈍いなぁ」
「そう? それって騒ぐこと? 」
軽く受け流してみせたが真那のコトだと言うのは推測しなくても分かる。だが紗江が鼻息を荒らして言うのは私の予想をはるかに超えていた。
「編入生ぐらいなら不思議じゃないけどね。この学校、頻繁に退学したり編入してきたりしているからね。だけど今回の編入生は違うよ。加奈、貴女と同じ才女だよ」
「サイジョ? 」
「創立以来、初めての編入テスト満点だって。加奈は入学試験だけど」