最初の客人は

「でも本当に知らないのですか? 」
「『彼女』のコトをかい? 」
「ええ」
それを聞いて口許が緩む。
そして、コーヒーを飲む。
スッと立ち上り、カウンターの延長線上にある本棚に向かい一冊の本を取り出した。
「この本はどこで買ったのかね? 」
少し表紙がくたびれた本だ。『田園』というタイトルの小説だ。
「それは私が買った本ではありません」
首を傾げた。
「私の母が亡き祖母から預かった本だと聞きました」
「そうですか」
本を捲り、目を落とす。
「こちらで座っては? 」
「そうだね。美味しいコーヒーを片手に」
席に戻り更に読み込む。
「面白いですか? 」
冷めたサイフォンを洗う。
「とても」