最初の客人は

確かに職場によってはわからない。
「どんな話をしたのですか? 」
見えていない相手に話すことは大概決まっている。
共通の趣味しか思いつかない。
だが出た言葉は意外なものだった。
「私が話してそれに質問するだけ」
目が点になった。
「びっくりしただろ? 君たちの世代で話すネットの世界では共通の趣味が中心だ。相手が見えない世界で本当にその人物が存在するかわからないのだから当然の流れだ。だが『彼女』は一度も自分からは何も話さなかった。自分の名前、出身、学校、暮らしも含めて全部。ただいつも言っていたのは一つ。私のことを聞かせて欲しい、だけ。それに『彼女』が「どんな感じだった? 」「あなたは何て言ったの? 」と私の心境や服装まで細かく質問をするだけだった」
おつまみ程度に柿の種を出す。砂糖が多いコーヒーにはぴったりのおつまみだ。
「詳しく聞いたのですね。全部答えたのですか? 」
「ああ」
「驚いた。今なら絶対に言わないですよ」
「そうだね。個人情報だからね。でも『彼女』が一番興味示したのは私の色恋だった」
ポリと柿の種を齧る。
「女性なら誰でも興味ありますよ。特に好きな人が付き合っていた女性なら尚更」
「そうかね? 」
「ええ」
「いつの時代も変わらないこともあるものだね」
口許を弛ませた。
釣られて一緒に笑った。