絵描きの夢は ⑵

入ってきたのはおそらく私より年上だ。背は私よりも低く眼鏡をしているが反射が無いから伊達だ。そして面食らったのはその容姿だ。あの人の孫娘とは想像がつかない。まぁ、そもそも依頼主の祖母でさえ対面でなく電話だけだが話し方でだいたいの気品に溢れた方だろうと想像はつく。

「ようこそ喫茶店 香風へ」エスコートをする。容姿で入店拒否は無い。ここの「主人」は来店する客であり、私はただ話を聞き客の「本日のメニュー」を出すだけだ。だが本人じゃない依頼の場合は本人を見て声を聞くまではメニューを出すのは流石に難しい。

席に座り私は氷をカットする。口が開いた。「祖母から話は聞いていますか?」「内容まではまだですが話を聞いて欲しいとは聞いています」幸運が舞い降りた。メニューが出来る。グラスに割った氷を入れ水を入れる。「まずは乾いた喉と体のクールダウンに」「ありがとう」だが飲まない。じっと見ている。ゴーと鳴る扇風機の音が聞こえる空間になる。グラスが飽和状態になる頃、突然彼女は筆箱と小さなスケッチブックを出した。