絵描きの夢は ⑶

シャシャと鋭利なカッターで紙を切るかのような音が鳴り出す。私は何を描いているのか分からない。「あ…じっとしなくて結構です。これは私の絵日記のような感じです」彼女はこの行為が自然なことだと言い切った。「そうですか…お飲み物は?」「ブルーマウンテンにガトーショコラ。生クリームを少し」「わかりました」私は豆を挽く。「ブルーマウンテンに砂糖は要らないから」彼女は切って捨てる口調で伝える。

それにしても凄い。確かに筆箱には消しゴムらしき物は見えているが、まだ一度も使っていない。それどころか鉛筆も持ち替えていない。同じB2の鉛筆で描いている。鉛筆には10段階程の濃さがあると高校の授業で聞いた事がある。筆箱には他の鉛筆があるから彼女が持っている鉛筆が何かは自ずと分かる。ミルで豆を挽きポットで湯を沸かすなどの音すら興味がないようだ。