絵描きの夢は ⑷

彼女は忘れていたかのように付け加えた。「すみません、言い忘れていました。先に白湯を」白湯?「コーヒーの前に水を知りたいので」あゝ、なるほどねと私はうなづく。コーヒーを知る人は豆にも興味があるが実は水にある。水を知りたいと言う人は初めてだ。

ポットに湯気が立つ。私は一度手に取ってカップに注ぎ「お湯です」と出した。彼女は描き続ける。私はガードーショコラを切り分ける。

「変でしょ、私」彼女が切り出した。「いいえ、私も変ですよ」と私。「そうなのですか?同世代なのにお店まで経営しているのに」「だから変なのです。成り行きで経営していますが、私、様々な話を聞くのが好きなのかもしれません」「そうですか」彼女は微笑した。