絵描きの夢は ⑹

彼女は続けた。「例えば鉛筆を今はこう持って貴女を描いています」アルコールランプの火を消す。「だけど描いたこの紙の中心に貴女の喉がきていない様に私の描く画には微妙な「ズレ」が生じているんです」「はぁ……」コーヒーをカップに入れ彼女に差し出す。ガードーショコラも合わせて。「私にはその絵は素晴らしいと思いますよ。ずっと動いている私をそこまで描けたら充分かと」「ええ。通常の画家なら」「通常の?」首を傾げる。「私は別の世界線に棲んでいる住人。紙を見るだけで絵が浮かび、そこに芯をなぞるだけでいいのに今は霞んでしまう」「つまりはスランプだと?」「ええ。祖母がここを紹介した理由は私のリフレッシュと思いましたが貴女からは何か違う感覚があるようですね」フォークで切り分け口にする。