契約の交わり ⑴

意識が身体に戻った。
倒れているのに同時に襲う目眩が酷い。部屋のドアが時計回りに回って見える。
「あ、あれ⁇ 」
なんとか上半身を起こしてスマホの画面を見る。まだ夜中の2時半。
「本当に疲れる。時間も10分しか経っていない。アレは本当のこと? 」
とにかく自分の中で整理することが一番だ。
「この『鏡』……本当にあの二人の巫女なの……」
月を映す普通に見える『鏡』を見つめる。
「う、うん……」
私の腰に手を回していた真那……『東の巫女』が目を覚ました。
「私よりも慣れているクセに意識が戻らないのね」
ちょっと嫌味を言った。
だけど様子がおかしい。キョロキョロと初めて見る目で私の部屋を見る。
そして次に裸の私を見る。
「えーとですね……貴女は? 」
「私は西野加奈よ。ここは私の部屋」
事実。
私は半分以上は悟った。
あの巫女じゃない、と。
ぽけーと虚ろな目で私を見ている彼女が本当の東真那さん。
「えーとですね……何故私は西野さんの部屋に? 」
それは私が聞きたい。どーして貴女がいると思う、と。
「東さん、時々記憶を失う時ってある? 」
「は、はい。気付いたら今みたいに外に出ていることがたまたま……。他人様の御宅にいるのは初めての経験ですが……」
俯いたままだがスラスラと話す。しかし、たまたまじゃなく毎日のようにあの巫女が出ていたんだね。
「とにかく夜中だから泊まりなよ。まぁ、私じゃなきゃ今頃は警察沙汰になっていた……」
「加奈! 夜中に何を騒いでいるの! 」
一階からママの声と足音が近づいている。
ま、マズイ!
「とにかく今は私のベッドに入って! 早く! 」
東さんをベッドに潜り込ませた。
見付かると本当に警察沙汰になる!
ドキドキしながら私もベッドに潜る。
ママが入る。
「あら。気のせい? 」
気のせいじゃないです。
今はドキドキする。目の前には東さん。部屋にいるママの狭間になっている私が一番緊張感に包まれていた。
「とにかく寝なさいよ。学校遅刻しても知らないからね」
お決まりの捨てセリフを言ってママは部屋を出た。
はぁ、はぁ。
「良かったぁー」
布団の中で呟く。
「あ、あのー」
「な、何? 」
「私、もう少しだけいてもいいのですか? 朝になったら大騒ぎじゃあ……」
「朝早くに帰ったら大騒ぎにならないよ。少しだけ寝てもいいよ。私も寝たいし」
「あ、ありがとうございます。ついでにお願いを聞いてくれますか? 」
お願い?
「私、抱き枕が無いと眠れないので……抱いていいですか? 」
いきなりーー!
でもいいと言った手前もあるし、今はまだ動けないし……。
「仕方がない、いいよ」
女同士だから間違いなんて無いし。なんて思いつつ、私の瞼は閉じていた。