数日後 ⑷

甘い香りが鼻につく。黒砂糖の独特の甘みがコーヒーの苦さよりも先にきた。目を閉じて唇に触れる熱さも気にしない。本当に美味しいコーヒーというのは苦さもだがコーヒーチェリーの果実の味わい深い酸っぱさも僅かに残っているのだと認識している。

以前に、私がまだコーヒーを飲み始めた頃にも祖母にも一度だけ同じ話した。すると祖母は無言で微笑んだ。おそらく祖母はその時に私を三代目と決めたと思う。「味が解る」例え調理が出来なくても喫茶香風の店主になる第一条件だが私は経営が実に下手だ。もう一歩のところで副業のきっかけを逃してしまったのだから。